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【偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)75

「嘘?試合捨てちゃうの〜」

野球に詳しくない女子学生でさえそう言う中、高野幸一はひときわ大きな声でマウンドへ、そしてグラウンドに居る他の選手に聞こえる様に叫ぶ。

自分の所に打球を打たせろ!と。

それに呼応するように、外野手から、次いで内野手からも声が挙がる。

ふっくら君の出すサインに頷き二者連続押し出し四球後の投球動作に入る三妻。

少しぎこちない投球は打ち頃の内角高めのストレート。

四球後のストライクは打てとばかりに初球から振って来る打者。

打球は高々と右翼の高野幸一の方へ伸びる。

確かに高野幸一の注文通り、彼の方へ打球は飛んで来た。

だが、抜ければ同点所か逆転されてお釣りが出る走者一掃の右翼線深くだ。

高野幸一は慣れない右翼スタンドボール際目掛けて走る。

「ピッチャー、ベースカバー」

二塁手が三妻に叫ぶと、中継に向かう。

全ての塁上の走者達は計りかねていた。

打球が抜けるのか、高野幸一が打球に追いつくのを待ってタッチアップを試みるべきか、を。

それだけ高野幸一の走力と向かう方向は無駄が無かった。

高野幸一の肩なら、下手に離塁すれば捕球されては戻れない。

高野幸一が落下地点に辿り着くに至り、三人の走者は塁へと戻る事を選択した。

特に三塁走者はタッチアップ体制の為、三塁コーチャーズボックスの選手の合図に備える。

自分が本塁へ帰れば同点であり、他のランナーが生きていれば次の打者で逆転も出来るとの地図を描いて。

「ゴー」

三塁コーチャーズボックスの控え選手が一際大きいで合図する。

振り返らず一気に本塁ベースへ走る三塁走者。

打球を捕球した高野幸一は一気に本塁に向けて矢の様な返球を見せる。

間に肩の強い二塁手が中継に入る。

ボールがグラブに収まるのと同時と言えるくらい素早く振り返ると一気に三塁線上に構えるふっくら君目掛けて腕を振り抜く二塁手

これだけ無駄なく継いでも、セーフのタイミングだったろう。

だが、ふっくら君は捕球姿勢を一瞬ホーム側から見て右、やや一塁側へずらしたのだ。

それが三塁走者の目に入る。

人間出来れば無駄な事は極力したくないのが本音だ。

それが一瞬の隙になったのかも知れない。

確かに二塁手の返球はやや一塁側へ寄って返された。

だがそれは三塁走者の予想より遥かに速かったのだ。

偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)74

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